What price us?



いくら信じられなかろうが、現実はどこまでも冴え渡って俺の脳髄を痺れるくらいに刺激した。
頭が状況を把握しようとするのに、その何倍もの早さと勢いで爆発する感情がそれを妨げた。
体がまるで別のものになったかのよう。
頭は燃えるように熱い気もするのに、体は恐ろしいくらいに冷えていくような気がした。
バラバラになりそうだ。
その証拠にもう、さっきから激しい嗚咽を壊れたようにあげ続けるやつが誰なのか、俺にはもうわからない。
あの人が消えた。
身代わりに。
欠けらだって。
帰らない。
いやだ。
嘘だろ。
こんな。
いきなり。
だって。
今まで目の前で。


それでも俺の体はわかってるんだろう。
さっきから拒絶するみたいに叫び続けてるんだから。
けど、頭はバカになっちまったみだいだ。
なんにもわかっちゃいない。
くだらないことばかりごちゃごちゃと考えて。
いっそあの人と一緒に俺も消えてしまえばよかったんじゃないか。
そうなるべきだったんじゃないか。
あの人がいなくなっても変わらないなんて、平気だなんて。
空気が足りなくなってて消えそうなこの呼吸ごと無くなれば。
あの人がいなくなったのになんで俺はここにいるんだろうか。
どうして世界はなんでもないって顔でそのままあるんだろう。



こんなことでいいはずない。
許しちゃいけないんだ。
あの人がいないのに。
いらないことばかり考え続けるこの頭。
真っ白になれよ。
馬鹿みたいに震えてみっともないったらないこの体。
消えてしまえ。
大切なあの人が消えたのに。
なんで俺はそのままなんだろ。
なんで世界は変わらないんだろ。



あの人が俺にとって、世界にとって、なんでもないわけがない。
あぁ、本当はとっくにわかってるよ。
ただ、信じたくないだけなんだから。
なにがどうなったのか。
どうしようもなかった。
ほんとにそうだったか?
他の道はなかったろうか?
消えたい。
なのに考えずにいられない。
あの人の大切さ。
わかってるんだ。
わかってるから。
あの人が何のためにどうなったのか。
それでも信じたくない。
だから言わないでくれよ。





助かっ た なんて